【解説】 トランプ政権は制裁で体制転換を期待、そうはならないとイラン指導部

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アミル・アジミBBCペルシャ語編集長

アメリカは24日、「世界中のイランの金融ネットワークに対する経済猛攻」を開始したと発表した。スコット・ベッセント米財務長官は、制裁対象には、デジタル資産、テクノロジー、金、航空、海運の5分野が含まれると述べた。また、イランと財政的な関係を保つ国は今後、孤立することになるとした。

しかし、ベッセント長官が第2次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦(Dデー)になぞらえ「経済的Dデー」と呼んだこの措置の発表は、イランの首都テヘランよりも米首都ワシントンで劇的に響いたかもしれない。

発表直後、イランのアリ・マダニザデ経済財務相はこれを「いつもの決まり文句」と呼び、イランは「あらゆるシナリオ」に備えているとけん制。こうした措置は予期していたもので、対処策を準備していると語った。

マダニザデ経済財務相の反応は、イランの指導者たちが抱くであろう主要な疑問を浮き彫りにしている。それは、「アメリカは今、まだ試していないこととして、どんなことができるというのか?」だ。

ベッセント長官は、イランとの取引を続ける国、銀行、企業に対し、より広範な2次制裁を科すと警告している。しかし、この基本的な政策は目新しいものではない。イランは長年にわたってアメリカによる制裁措置に直面しており、その中にはイランと取引する外国企業に対する制裁も含まれている。

イラン政権にとって重要なのは、アメリカが制裁措置をこれまで以上に拡大し、実施できるかどうかだ。

アメリカの封鎖措置は既に影響を及ぼしている。イランの海路での石油輸出能力は以前より低下し、物資や設備の輸入も困難になった。イランは陸上で7カ国と長い国境を接しており、制裁回避のために長年、これらの国境を利用してきた経験がある。しかし、陸上ルートは海上貿易、特に石油輸出に簡単に取って代われるものではない。

したがって、過去の制裁措置を生き延びてきたルート、特に中国やイランの近隣諸国が関与するルートをアメリカが遮断することに成功すれば、圧力はさらに深刻化する可能性がある。しかし、それも容易ではない。中国の外務省は25日、アメリカの制裁措置に断固反対すると述べ、違法だと指摘した。

制裁が失敗に終わった場合、ベッセント長官の発表は、イラン国内でアメリカとの合意に反対する勢力を活気づける可能性がある。

この勢力は、アメリカが経済圧力に回帰したのは、他に選択肢が限られているからだと主張するかもしれない。新たな軍事作戦にはリスクが伴う一方で、長年にわたる制裁措置も、イランにアメリカの要求を受け入れさせることに失敗した。

アメリカには、外交の余地がほとんど残っていない。

パキスタンをはじめとする仲介国は、依然として協議の再開を試みているものの、アメリカはさらなる攻撃の可能性を排除していない。今回の新たな脅しは、合意を望むイラン当局者の立場を弱める可能性がある。

二つの時計

イランはこの戦争以前から、高インフレと急速な通貨安に苦しんでいる。そして、2月28日に米・イスラエル軍による空爆が始まって以来、状況はさらに悪化している。

イラン通貨リヤルの下落は、さまざまな分野に深刻な影響を及ぼしている。輸入品の価格は上昇し、企業は事業計画を立てるのに苦労し、人々の貯蓄は価値を失っている。石油輸出制限も、政府の外貨獲得を阻害している。

BBCの取材に応じたネギンさん(仮名、34)は、現在の月収は約100ドル(約1万5000円)だと話す。

「映画館にも劇場にもコンサートにも行かない。誰にもプレゼントを買わない。誕生日パーティーにも出席しない。政府の補助金による商品券がなければ肉を買うことすらできない。これがないと、肉を買う余裕はない」と、ネギンさんは語った。

2人の子どもを持つ主婦のモナさんは、戦争が始まって以来、夫がずっと失業中だと話す。

「特に、きのうから始まった制裁措置に不安を感じている。戦争が始まって以来、夫は仕事に戻っていない。以前は船員として働いていた」

「私たちはできる限り支出を抑えようとしているが、余分な出費やちょっとしたぜいたく品は、すべて削減せざるを得なくなっている」

イランは、時間がドナルド・トランプ米大統領にとって不利に働いていると考えているかもしれない。ホルムズ海峡でのさらなる混乱は、原油価格とガソリン価格の上昇を招き、アメリカのインフレを加速させ、11月の中間選挙を前に政治問題に発展する可能性がある。

イランにとっては注目すべき明確な日程だが、アメリカの選挙に頼るのは賭けだ。

その頃には、イラン経済ははるかに弱体化している可能性がある。

そして中間選挙の先には、別の問題が潜んでいる。トランプ大統領は2028年の再選がかかっているわけではないため、イランとの対立を継続し、代償を受け入れることに対して、現政権が大きな自由度があると考える可能性がある。

したがって、イランは二つの時計を注視していることになる。

一つはワシントンで進む政治的な時計。もう一つはイラン国内で進む経済的な時計だ。原油輸出量の減少、貿易の混乱、そして通貨リヤルへの圧力が1カ月続くごとに、戦争終結への合意を待つコストはますます高くなる。

イラン指導部は難しい選択を迫られている。今譲歩すれば、圧力に屈したと見なされ、アメリカはさらなる要求を突きつけてくるだけだと主張する強硬派を勢いづかせることになるだろう。

一方で、トランプ大統領の戦略が政治的または経済的な問題に直面すれば、待つことはイランの立場を有利にする可能性がある。しかしイランはその後、経済が弱体化した状態で交渉に臨むことになるかもしれない。

今後の展開は、イラン国外で何が起こるかに大きく左右されるだろう。

中国の銀行や、中東の貿易相手国および企業が、アメリカから制裁を科されると考えてイランとの取引から手を引き始めた場合、ベッセント長官の計画がイランの計算を変える可能性がある。

あるいは、それらの企業などがそうせず、逆の事態が起こることも考えられる。その場合、譲歩に反対するイランの派閥は、アメリカがまたしても決定的なカードを切ったが、情勢は変わらなかったとし、イランは引き続き待つか抵抗すべきだと主張するだろう。