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ロンドンの大気汚染対策で子どもの肺機能が回復、研究チームも驚く
スミタ・ムンダサド保健担当記者
イギリスで大気汚染規制が導入された地域に住む幼い子どもたちの肺が、驚くほど早く回復し成長し始めたことが、最新の研究で明らかになった。調査チームはこの結果に「衝撃を受けた」と述べている。
研究者らは、大気汚染によって肺の発育が阻害されていたロンドンの子どもたちの健康が、2019年に導入された「超低排出ゾーン(ULEZ)」政策で排気ガスの排出量が削減されると、著しく改善したことを明らかにした。
この研究は、ロンドンと、ロンドン北郊ルートンの小学生3400人以上を対象としたもの。チームはこの結果を、地域の大気浄化で大気汚染による幼少期の健康被害が軽減され得ると示す、これまでで最も強力な証拠だと考えている。
一方で、研究に関わっていない科学者らは、他の要因も考慮する必要があると警告している。
大気汚染は幼児の肺の発育を阻害し、喘息、心臓病、糖尿病、さらには早死にのリスクを高める可能性がある。
子どもは肺や免疫系がまだ発達段階にあるため、大気汚染の影響を受けやすい。また、大人よりも顔が地面に近く、排気ガスなどの発生源にも近いため、屋外にいるときはより弱い立場に置かれる。
イギリスでは2020年、2013年に喘息発作で亡くなったロンドン出身のエラ・アドゥー=キッシ=デブラさん(9)の死因が、同国で初めて大気汚染と記録された。
今回の研究では、ロンドンのULEZにある小学校に通う6~9歳の子どもたちを5年間追跡調査し、ルートンに住む子どもたちと比較した。 両地域では、社会経済的背景や身体活動、民族性が同じ子どもたちが選ばれた。
子供たちは、ULEZ導入前の1年間と導入後の4年間、肺機能検査と肺活量検査を受けた。
研究の初期段階の調査では、ロンドンの子どもたちの肺活量を、ロンドンよりも大気汚染度は低いが汚染物質の種類は似ているルートンの子どもたちと比べると、ロンドンの子どもたちの方が少なかった。
しかし研究終了時、両グループの子どもたちの肺活量はほぼ同じレベルに達した。
「子どもの肺は毎年成長していくものだと予想されるが、今回の研究結果によると、ロンドンの子どもたちの肺の成長は4年間で加速し、ルートンの対照群と同等の肺活量に達した」と、研究者らは述べている。
「最初に結果を見たときは、本当に驚いた」と、この研究の最終著者であるロンドン大学クイーン・メアリー校のクリス・グリフィス教授はBBCに話した。
「ロンドンのグループにおける肺活量の回復速度は驚くほどで、印象的だった」
「これは、意欲的な大気浄化区域が汚染レベルを低下させ、子どもたちの発育阻害を急速に改善できることを示している」
主要検査では、子どもが大きく息を吸い込んだ後、1秒間にどれだけの空気を強制的に吐き出せるかを測定した。
グリフィス教授の説明によると、肺活量の改善による具体的な効果として、ロンドンのグループの子どもたちがルートンのグループの子どもたちと、たとえば同じ速さで息切れせずに走ったり、あるいは同じ数のろうそくを吹き消したりできるようになるかもしれないという。
この研究で使われた別の肺活量測定方法でも、同様の顕著な改善が見られたが、その程度は「大きく息を吸って1秒間で吐き出す」調査法の結果ほどは大きくなかった。このことから、まだ改善の余地があることがうかがえる。
ロンドンのグループでは、肺活量が「臨床的に障害されている」(咳や息切れを引き起こす肺の損傷がある)と判断された子どもの割合が、全体で14%から9%に減少した。
一方、小規模な大気汚染対策がいくつか実施されているだけのルートンのグループでは、その数値は9%から7%だった。
研究チームの測定結果によると、調査期間中、ロンドンの子どもたちが浴びる二酸化窒素(NO2)の濃度は、ルートンよりも速いペースで低下していたことが明らかになった。
研究チームによると、この排ガス濃度急低下との関連が重要で、調査で明らかになった子どもたちの肺の成長促進は、ULEZ導入後の大気質の改善に関連している可能性が高いことを示している。
ロンドンのULEZは2019年、首都の大気汚染を改善するため、サディク・カーン市長が導入した。ロンドンではそれまで、自動車から排出される有害ガスNO2の濃度が高かった。
多くの排ガスを出す古い車両は、ロンドン中心部を走る際に日額料金の支払いが義務付けられた。この措置は後に首都全体に拡大された。多くの人がこの政策を支持した一方で、政治的な反対や抗議活動にもつながった。
今回の研究には関与していない英レスター大学のアナ・ハンセル教授は、子どもたちの肺機能の改善は「生涯にわたる健康上の恩恵をもたらす可能性が高い」と述べた。
ハンセル教授は、この研究は「評価の高い研究者が慎重に実施した」ものであり、ロンドンとルートンの地理的な比較は、時間の経過とともに大気汚染が全体的に減少してきたため、重要だと付け加えた。
「今回の調査期間には新型コロナウイルスのパンデミックが含まれていたことを考えると、これは特に有益だった。ロンドンでの調査結果は、パンデミックに関連した変化によるものではないことを示している」
さらに、ULEZの導入後、ロンドンの子どもたちが徒歩や自転車で通学する可能性が高くなったかもしれない点も、調査結果に影響している可能性がある。
他方、英オープン大学のケヴィン・マコンウェイ名誉教授は、新型コロナウイルスの影響を全体的に考慮することが重要だと指摘。他の都市を研究することで、ロンドンとルートンの間の測定されていない差異が、この改善に寄与しているか解明する手掛かりになるかもしれないと述べた。
研究の筆頭著者であるロンドン大学クイーン・メアリー校のヘレン・ウッド博士は、今回の結果は非常に有望だが、「ロンドンとルートン、そしてイギリスの他の都市の大気汚染は依然として世界保健機関(WHO)のガイドライン基準を超えているため、油断は禁物で、まだやるべきことがある」と話した。
「大気浄化区域は複雑な問題だというのは承知している。企業や個人への影響を考慮しなくてはならない。私たちは、議論を深めるために新しい証拠を追加しているのだ」と、最終著者のグリフィス教授は述べた。
「世界中の都市には、10億人以上の子どもが暮らす。そのほとんどが汚染された環境で育ち、人生のスタート時点でとても悪い状態にさらされている」
「だからこそ、これは世界的に重要な意義を持つ研究結果だ」
この研究には、英ベッドフォードシャー大学、英オックスフォード大学、英ケンブリッジ大学、英エディンバラ大学、米・南カリフォルニア大学の研究者らが参加した。論文は医学誌「ランセット・パブリックヘルス」に掲載された。