【解説】 パラマウントのワーナー買収が完了、どんな影響があるのか

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フランシスコ・ヴェラスケス・ビジネス記者(米ニューヨーク)、リーガン・モリス記者(米カリフォルニア)
数カ月にわたる準備期間を経て、アメリカのパラマウント・スカイダンスはついにワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収を完了した。買収額は1100億ドル(約17兆4000億円)。
これにより、ハリウッドの二大老舗企業が統合され、「ハリー・ポッター」や「ゲーム・オブ・スローンズ」といった人気シリーズを擁する、スカイダンスという名の巨大エンターテインメント企業が誕生する。
しかし、この大変革の裏には、合併後のスカイダンスができることとできないことに関する厳格な規則が存在する。それは、製作する映画のノルマや、報道部門の編集上の独立性まで多岐にわたる。
この合併が視聴者や、彼らが鑑賞する映画、テレビドラマ、ニュースなどにどのような影響を与える可能性があるかを解説する。
1. ストリーミング料金が値上がりする可能性がある

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ワーナー・ブラザースは、「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」、「ユーフォリア/EUPHORIA」などを手掛けたストリーミング事業「HBOストリーミング・ネットワーク(旧HBO MAX)」を所有している。一方のパラマウント・スカイダンスは、「イエローストーン」、「パークス・アンド・レクリエーション」、「NCIS ~ネイビー犯罪捜査班」などを配信するParamount+を運営している。
HBO MaxとParamount+が単一のプラットフォームまたはバンドルに統合されると、長期的には加入者の財布を圧迫する可能性が高い。
両社の既存加入者は短期的には節約できるかもしれないが、アナリストは合併後の巨大企業が収益性を追求するにつれて、全体的な価格は上昇すると予想している。
合併後のスカイダンスは、経営陣が年間60億ドルのコスト削減を目指しているにもかかわらず、今回の取引で800億ドルという巨額の負債を抱えることになった。
アナリストらは、1100億ドル規模のこの取引による経済的負担は、最終的に消費者が負うことになるだろうと警告している。
米フォレスターのリサーチディレクターを務めるマイク・プルークス氏は、ストリーミングサービスは収益性を高めるために絶えず料金を引き上げていることや、スカイダンスが巨額の負債を抱えていることから、価格上昇は避けられないだろうと指摘した。
スカイダンスが単一アプリではなくParamount+とHBO Maxのバンドルへと移行することで、視聴者はより幅広いコンテンツにアクセスできるようになるものの、プルークス氏は「それが将来的な価格上昇を防ぐとは考えにくい」と警告している。
2. 公開される映画作品の増加
合併に反対していたアメリカ各州との和解の一環として、パラマウント・スカイダンスは今後5年間、毎年一定数の映画を公開することに合意した。
これにより、最初の2年間は年間30本の映画を公開し、残りの期間は年間32本の映画を公開しなければならない。
つまり、合わせて156本の映画が向こう5年で公開されることになった。また、その大半は「大規模公開」作品、つまり映画館で上映される作品でなければならない。
また、合併後のスカイダンスは、毎年少なくとも4本の独立系映画を公開することでも合意した。
映画のノルマを達成できなかった場合、スカイダンスは以前買収した映画スタジオ、ミラマックスの49%株式を売却せざるを得なくなる可能性がある。ミラマックスは、ハリウッドの元大物映画プロデューサーで、性的暴行などの罪で服役中のハーヴィー・ワインスティーン受刑者が経営していた。
マディン・ハウザー法律事務所の企業弁護士、ブリアン・ギリアム氏は、たとえ期限が設けられていても、この映画への取り組みは意義深いと述べた。
「これらの義務が満了すれば、同社ははるかに柔軟な対応が可能になるだろう」
「一時的なルールでは、構造的な市場の変化を恒久的に解決することはできない」
5年間の契約が終了すれば、スカイダンスはディズニーやネットフリックスといった競合と同様に、映画よりもストリーミング配信を優先するようになる可能性がある。
2019年にディズニーが21世紀フォックスを710億ドルでの買収した時のように、巨額の買収案件は、映画館で上映される映画の減少につながる可能性がある。
20世紀フォックスは買収前、毎年12~17本の映画を劇場公開していたが、ディズニー傘下に入ってからは、その数は年間わずか3~6本まで減少した。
3. ハリウッドの雇用が影響を受ける可能性がある

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二つの歴史あるスタジオの合併は、ハリウッドの舞台裏で働く人々から「大惨事」と評されている。
俳優や脚本家たちは先日、ロサンゼルスのパラマウント・スタジオに集まり、この取引に反対を表明。規制当局が業界の生計を守ることに失敗したと非難した。
ドラマ「クリミナル・マインド」に出演しているキルステン・ヴァングスネス氏は、BBCに対し「心が張り裂けそう」だと語った。
「この街を形作っているのは人だ」と、ヴァングスネス氏は言った。
「エンターテインメントを生み出しているのも人であり、この業界を支えているのは日々の創作活動に携わる人々だ。今回の事態で傷つくのはまさにそういう人たちだ」
コンサルティング会社CVLエコノミクスがロサンゼルス郡向けに作成した報告書によると、この合併によって映画・テレビ業界の直接雇用が約4500人失われるほか、3年間で12億6000万ドルの賃金損失が発生する可能性があると推定されている。
この打撃は、2022年以降、映画・テレビ業界の労働力のおよそ3分の1、約5万人の雇用をすでに失っているロサンゼルスにとって、大きな痛手となる可能性がある。
英ナショナル大学のシリーシア・トンプソン教授(経営学)は、「これは中小企業、業者、ケータリング業者、そして地域社会に打撃を与える」と述べた。
そのうえでトンプソン教授は、ハリウッドは「単一の場所」というよりも、「分散したネットワーク」へと変化していく可能性があると警告した。
パラマウント・スカイダンスと各州との合意では、解雇された労働者を再訓練するための労働力基金が設立されるものの、弁護士らは、この合意は人員削減を阻止するものではないと指摘している。
「和解合意には、人員削減を制限する条項は一切含まれていない」と、前出のギリアム弁護士は付け加えた。
4. CNNとCBSは変化する可能性がある

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パラマウント・スカイダンスと各州との合意では、CNNとCBSにおける報道の独立性に関する懸念に対処するため、パラマウントが直接任命するニュース編集独立委員会が設置されることになった。
今回の大規模買収では、アメリカの二大テレビニュース事業が一つの企業の下に統合されることになった。買収前は、パラマウントがCBSニュースを、ワーナー・ブラザースがCNNをそれぞれ所有していた。
両局は共に、激しい政治的圧力に直面している。ドナルド・トランプ米大統領は先に、CNNの記者のホワイトハウス立ち入りを禁止した。同局はさらに、業界全体の再編の中で経営陣の交代も経験している。
パラマウントのデイヴィッド・エリソン最高経営責任者(CEO)は、CNNのマーク・トンプソン局長に、買収完了後もCNNのトップにとどまるよう要請した。CBSニュースの編集長であるバリ・ワイス氏も、引き続きその職を務める。
しかし、経営陣が合併後のスカイダンス全体で数十億ドル規模のコスト削減を目指しているなか、従業員たちは、この統合がCNNとCBSで大規模な人員削減を引き起こすのではないかと懸念している。
メディア擁護派や法律専門家は、この合併の中で報道の自由が保障できるのかどうかについても、依然として強い懐疑心を抱いている。
報道の自由財団の擁護活動責任者を務めるセス・スターン氏は、パラマウントが任命した独立委員会を「無価値」だと評した。
「この委員会は、解決しようとしているはずの憲法修正第1条の問題、つまり政府による報道への干渉を、自ら作り出している」とスターン氏は述べた。
ギリアム弁護士は、実権が伴わない紙の上の約束はほとんど意味がないという点に同意している。「委員会は、協定で定められた権限の範囲内でしか権限を持てない。権限のない監督は、単なる観察に過ぎない」と、同弁護士は述べた。












