ノーベル化学賞、日本の硤合氏とフランスのカガン氏に 生命の非対称性の謎を解明

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ヴィクトリア・ギル、エスメ・スタラード(BBC科学報道チーム)
今年のノーベル化学賞が、フランスの科学者アンリ・B・カガン氏と日本の硤合憲三(そあい・けんそう)氏に贈られることが、7日に発表された。生命の非対称性という化学的な謎を解明した功績が評価された。
両研究者は、自然界がどのようにして、分子の鏡像ではなく、正しい型の分子だけを作り出すのかを解き明かした。
例えば、タンパク質を構成するアミノ酸分子は、互いに鏡像関係にある二つの形態で存在する。
だが、地球上の生命体は、その片方だけでできている。なぜそうなのかという疑問に、今回のノーベル賞受賞者らは答えを出した。
この性質は、有機化学において「キラリティー」と呼ばれる。それを形成するキラル分子には、右旋性と左旋性のものがある。
それらは私たちの手のようなものだと考えることができる。全く同じではないが、それぞれが鏡像のようになっている。
自然界は、ほぼ機能に必要な形態だけを生み出す。だが、実験室での化学反応では通常、左旋性と右旋性の分子が半々の割合で作り出される。
医薬品の製造では、これは特に重要な意味をもつ。それぞれが、人体に異なる作用を示すからだ。
片方が病気と闘う性質をもつかもしれない一方で、もう片方は全く効果をもたなかったり、人体に害を及ぼしたりする可能性があるのだ。
サリドマイドの開発はその一例だ。この薬は1950年代、つわりで苦しむ妊婦に処方された。キラル分子の同薬は、右旋性の型が効果的な治療薬だが、左旋性の型は毒性がある。
当初投与された薬は、両方を混ぜたものだった。その後、体内でこれら二つが互いに変換されることが判明した。この薬を服用した女性から生まれた何千人もの子どもに、重度の障害があらわれた。
硤合氏は7日午前、電話でノーベル賞の記者会見に臨んだ。「今日は私の人生で最も心躍る日の一つだ」と述べた。

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カガン氏と硤合氏は、キラリティーの謎を解明することで、目的とする分子をより多く生成するための化学反応の設計方法を編み出した。
ノーベル化学賞選考委員会のハイナー・リンケ委員長は、「アンリ・カガンと硤合憲三は、化学の1世紀以上の謎に答えを与えた。分子の正しいバージョンを選択的に生成するホモキラリティーがどのように自然発生するのか、という謎にだ」と説明。
「彼らが開発した化学反応は目を見張るものだ」
カガン氏は、パリ南大学の名誉教授で、1986年に化学反応を操作する新たな方法を初めて発見した。これにより、鏡像の一方を、従来可能とされていたよりも大幅に多く生成できるようになった。
東京理科大学名誉教授の硤合氏は、1995年に次の段階へと進んだ。科学誌ネイチャーに論文を発表し、有機分子の望ましい型のみを生成するホモキラル性の可能性がある化学反応を初めて説明した。
硤合氏はさらに2003年、二つの鏡像のうちの一つだけが形成される反応を制御することに、ついに成功した。
ノーベル委員会は声明で、「生命体そのものを除き、これまで誰もこの偉業を成し遂げたことはなかった」とした。
硤合氏は7日の記者会見で、この分野における「非常に多くの優秀な研究者」を称賛した。
イギリスの王立化学会のロバート・モカヤ会長は、今年のノーベル化学賞について、「社会が直面する最大の課題のいくつかに対して、基礎化学がいかに解決策の基盤となり得るかを示す、力強い例だ」と述べた。
そして、「異なる異性体(分子の型)は、全く異なる生物学的、物理的効果をもち得る。そのため、あらゆる病気の効果的な治療薬の発見で非常に重要だ」と付け加えた。

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英ノッティンガム大学でキラリティーの生物学を研究するアンガス・デイヴィソン教授は、ノーベル賞を受けた今回の化学研究について、生命体が「片手性」を好む仕組みと理由を解明するのに役立つ可能性があると、BBCニュースに述べた。
「生命の基本的な構成要素のキラリティーが、私たちがまだ完全には理解していない方法で、キラルの体をつくり出している」
私たちの心臓が体の左側にあり、カタツムリの殻が右に巻いているのはこのためだと、同教授は説明した。
ノーベル化学賞選考委員会のピーター・ソムファイ委員は、今年の受賞研究について、「化学がどのように機能するかについての、私たちの基本的な理解」の一部となっていると話した。
同委員は、鏡像がどのように作られるかを示すことは、「おそらく人生における最も根本的な問いだ。なぜなら、それは40億年前に生命が誕生した時に起こった現象だからだ。そしていま、私たちは初めてそれを実験室で再現することに成功した」と述べた。











