ウクライナのバス、ロシアが滑空爆弾で攻撃 乗客ら少なくとも30人死亡

バスの車内に赤い炎が見え、黒煙が上っている。窓やタイヤは焼け落ちている
画像説明, ロシアの攻撃を受けて炎上したバス。ゼレンスキー大統領は同盟国に「具体的な行動」を求めた(ウクライナ東部クラマトルスク)
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ウクライナ東部ドネツク州の前線都市クラマトルスクで8日、民間バス2台がロシア軍の滑空爆弾で攻撃され、少なくとも30人が死亡した。ウクライナの救助当局が明らかにした。

当局によると、ロシアの攻撃で同州ビレンケ村でも3人が死亡した。

ドネツク州トップのワディム・フィラシュキン氏によると、負傷者は18人に上った。ロシアはできるだけ多くの民間人を殺害するために、乗客がいるバスを標的にしたと、フィラシュキン氏は非難した。

クラマトルスクと、隣接するスラヴャンスクは、いわゆる「要塞地帯」の一部だ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナの工業地域として知られる東部ドンバス地方全域の支配権を主張しており、ロシア政府はその一環としてこの一帯を掌握しようとしている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「この攻撃に対して我々は必ず報復する」と述べた。

ゼレンスキー氏はメッセージアプリ「テレグラム」への投稿で、「ロシアはドンバス地方のあらゆる生命を破壊しようとしている。世界はこれに対応しなければならない。ロシア人がもたらしたすべての死に対して、彼らが当然受けるべき厳しい対応が必要だ」と訴えた。

地元の検察当局が公開した複数の画像には、金属製のバスが炎上する様子や、路上に散乱した残骸、路上に横たわる犠牲者が写っている。

ロシア政府は、今回の攻撃についていまのところコメントしていない。ウクライナ各地ではロシアによる攻撃が劇的に増え、民間人の死傷者も大幅に増えている。

今年8カ月間の民間人死者数、前年を上回る

国連によると、ウクライナでは今年1月から8月までに死亡した民間人の数が、昨年1年間の死者数をすでに上回っている。

7日未明には、首都キーウの東に位置するチェルニヒウ州プリルキで、5階建て集合住宅にロシアのミサイルが直撃し、就寝中の子ども5人を含む22人が死亡した。犠牲になった子どものうち3人はわずか1歳だった。

ゼレンスキー氏とともにプリルキの攻撃現場を訪れたイギリスのエド・ミリバンド外相は、この攻撃について、プーチン氏の「邪悪な意図と邪悪な戦略」を示すものだと述べた。

ミリバンド英外相は、「ロシアや、プーチン氏の軍事機構、(西側の制裁措置を回避するための)『影の艦隊』、石油会社、暗号資産、そして戦争資金に対して、さらなる制裁」を科すと発表。ゼレンスキー氏が「この戦争で勝利するまで、必要な限り」、イギリスはウクライナと共にあると述べた。

ウクライナ東部の「要塞地帯」と呼ばれる地域の詳しい地図。北からスラヴャンスク、クラマトルスク、ドルジュキウカ、コスチャンティニウカの位置や、ロシア占領下のドネツクの位置などが示してある。2014年にロシアが一方的に併合したクリミアも含まれている。出典は米戦争研究所とアメリカン・エンタープライズ研究所の「重大脅威プロジェクト」(日本時間10月8日午前6時時点)

クラマトルスクへの攻撃で多数の死者が出たことを受け、ドネツク州トップのフィラシュキン氏は、東部の前線地域に残っている人々に対し、ウクライナ国内のより安全な地域へ避難するよう呼びかけた。

また、隣接するスラヴャンスクなどの都市で治安状況が急速に悪化していることから、すべての公共交通機関に運行停止を命じた。フィラシュキン氏は、民間人の安全確保が最優先だとし、「乗客や運転手の命を危険にさらす権利は、我々にはない」と述べた。

ロシア政府は、プーチン氏が2022年2月に開始したウクライナへの全面侵攻を正当化するため、ロシア語話者が多いウクライナ東部ドンバス地方の「解放」と「保護」をしばしば掲げてきた。ウクライナとその同盟国は、根拠のない主張だと一蹴している。

ドンバス地方はルハンスクとドネツクの2州で構成される。ルハンスク州の大部分はロシアの支配下にある。ウクライナが依然として維持し続けているドネツク州も、およそ2割の地域でロシア政府が制圧を目指している。

クラマトルスクはこの戦争の大半の期間、ウクライナ軍の補給などの後方支援拠点として機能してきた。しかし、ロシア軍が市の東側へ迫る中、現在はほぼ毎日、攻撃を受けている。

特にスラヴャンスクとクラマトルスクに対しては、滑空爆弾が使用されている。滑空爆弾は小型の翼があり、単に地上に落下するのではなく、標的に向けて飛んでいく。8月下旬には、クラマトルスクに対して1日で最大9発の滑空爆弾が発射された。

クラマトルスク市議会は今回の攻撃を、「民間人に対するロシア軍の恐ろしい犯罪」だとした。

「ロシアはまたしても、軍事目標が全く存在しない場所を攻撃した」

首都への攻撃続く

ロシアはここ数週間、首都キーウに対しても絶え間ない空爆を行っており、警報がほぼ途切れることなく鳴り続けている。

キーウの警察は8日、ロシアの最新の攻撃で4人が死亡し、2人が負傷したと発表した。

ロシアの攻撃により、学校にいる子どもたちは授業を中断して地下シェルターへの避難を余儀なくされている。企業は業務を停止し、公共交通機関の運行にも支障が出ている。

攻撃はウクライナの重要インフラ、特に電力網にも及んでいる。停電が発生し、水の供給にも影響が出ている。

キーウの水道当局は8日、停電の影響で、市内を流れるドニプロ川の右岸地域全体において水圧が低下していると警告した。

数百万人の市民が利用するキーウの地下鉄は同日、「外部電力供給センター」の電圧低下により、一時的にすべての列車の運行を停止した。その後、運行は再開したものの、通常より間隔をあけて運行していると地元当局は説明した。

ゼレンスキー氏は、今回の攻撃で被害を受けた人々とその家族に哀悼の意を表した。そしてウクライナのパートナー国に対し、「ウクライナを守るための新たな防衛支援パッケージを通じた具体的な行動」が必要だと訴えた。

ゼレンスキー氏は今週、7日のプリルキへの攻撃に先立ち、ロシアが大規模攻撃を計画していることを示す情報があると警告していた。この警告を受け、キーウではいくつもの家族が地下鉄の駅へ避難した。

現時点では、こうした事前の警告が、ウクライナの人々に残された数少ない防御手段の一つだ。

迎撃ミサイルは世界的に不足しており、ウクライナが、飛来するロシアの弾道ミサイルを阻止できる可能性はほとんどない。

ロシアとウクライナはここ数カ月、互いに長距離攻撃を激化させている。ロシアは、ウクライナのデータセンターや物流倉庫などを標的にしている。

一方、ロシア国営メディアは8日、ウクライナのドローンがロシア最大の検索エンジン「ヤンデックス」のデータセンターを攻撃し、ロシア国内の複数のウェブサイトが閲覧できなくなったと報じた。